カチン―― あたしはその音でやっと起き上がり、振り返る。 そこにいたのは将人ではなく、真っ白な髪に真っ赤な目をした人間。 それは正に狂犬だった。 「………う……そ」 その男は本当に狂犬という名に相応しい男で、カチンカチンとジッポーを開けたり閉めたりしながら、あたしを睨み付けるように見ていた。