龍平はタバコを吸いながらテレビを見ていた。
「なぁ、羽流」
「ん?」
「空手教えたろか?」
突然虎太郎がそんな事を言うから、あたしの頭の上には?がいっぱいになった。
「…空手?」
「おう。だって明日から学校やん?殴られたりするんやろ?」
「あぁ…」
虎太郎なりにちゃんと考えてくれてたんだ。
そう思うと何か嬉しくなってフッと笑みがこぼれた。
「何笑ろてんねんッ」
「ごめん。嬉しかったから」
「ほんま心配やねん。狂犬の事もあるし…」
「ありがと、虎太郎。でも大丈夫。あたし負けないって決めたの。それに狂犬の人には気を付ける。しっかりする」
「それやったらええねんけど…何かあったらほんまに言うてきいや?」
「うん」
ありがとね、虎太郎。
「虎太郎らしいな」
そう言ってフッと笑い、龍平は部屋に入って行った。
夜は静かに更けていく。