「おがえりなざい」
「鼻をつまむな。あ、そうだ。運転手さん。この先、最徐行でよろしく」
「? 分かりました?」
タクシーは再び、走り出す。
「最徐行でって、めっちゃ遅くないですか? 間に合わないですよ!」
「今に分かるよ」
「いや、私の晩御飯が、こうしている今にも、秒単位で減っていってるんですよ! そんな悠長なことできますか!」
「元種あっての火種。意味分かる?」
「意味は分かりますけど、言い方が腹が立ちます! あと、今、関係なくないですか? 私はこの晩御飯のために6食抜いてるんですよ!」
「うわ・・・」
「そんなダンゴムシを見るような目で目ないでください! いや、この際、見られてもいいです!」