あまり舗装されていない道をタクシーは、 ほどほどのスピードで進み続けている。 新入りなのか、若めの運転手は洗練されていないテクニックで私達を運ぶ。 テクニックに応じて割引があれ、と願うほど、 心臓に悪い金額がメーターの中で刻一刻と釣り上がっていく。 「まだ着かないんですかね?」 「金持ちの館なんて、もっと山の上だろ」 雑誌をめくりながら隣の席の「J」が応えた。