だから、里夏が卒業後はアメリカに留学すると言ったとき、
俺は、別れを告げた。
里夏は遠距離になるけど付き合いたいと言った。
けど、本当の気持ちを伝えた。
「好きな奴がいるんだ。…昔から」
そう、ずっと昔から。
里夏には悪いと思った。
ただ利用しただけに過ぎなかった。
けど、好きにはなれない。
里夏は泣きわめいて嫌がったけど、俺は無理矢理納得させた。
恨まれてもいい。
もう嘘をつくのは嫌なんだ。
俺は今までの時間を、埋めるようにあいつに関わった。
馬鹿な栞を意味もなく馬鹿にして。
無駄にからかって。
それにいちいち反応してむくれる栞に内心笑って。
幸せだった。胸の奥に、小さな痛みを残しながら、あいつの側にいれることが嬉しかった。