でも俺は冬兎のこともいつも、羨ましがっていた。
冬兎は優しいのはもちろん、栞になんでも素直に気持ちを伝えてる。
婚約者だと言われた日、母さんが、栞じゃ嫌?って俺ら3人に聞いてきた時…
凌兄と俺が曖昧な答えを言うのに、
冬兎は
「別にいいよ。僕、栞のこと嫌いじゃないから」
そう言った。
好きだ、とは言わなかったけど…。
でも羨ましかった。
――「俺、ヤダ」
――「だってこいつ、料理出来ねぇじゃん!俺、飢え死にしたくない!」
言ってる最中自分で、何言ってんだ俺!って思ってた。
本当は嫌なんかじゃない。
めちゃくちゃ嬉しい。
もし、まずいめしでも文句言うかもだけど、残さず全部食べてやる。
そう思ってんのに、
いつだって俺は、肝心なとこで、大事なとこで、素直になれないんだ…。
……馬鹿だよな、俺。
お前が合コン行った時もそう。
俺が自分で助けに行けばいいのに結局家行ってさ、
『栞が合コン行った!!』
って言うしか出来ねぇんだ。
お前のこと好きなのに、
お前のこと守りたいのに、
凌兄みたく上手く守れない。
お前の笑顔好きなのに、
お前を笑わせたいのに、
冬兎みたく上手く言えない。
お前の瞳に俺が映ってないこと、ちゃんとわかってるんだ。
でも少しでも俺を見て欲しくて…唯一得意なサッカーに誘ったりとか頑張ってみたけどさ。
でも、本当はちゃんとわかってたんだ。
だから……
『いや〜勇紀とは違ってかわいいねっ♪癒されるよ!!』
『先輩〜!こいつに手ぇ出すと、うちの兄貴に殺されるんでやめた方がいいっすよ!』
凌兄とお前の幸せを、
……お前の幸せを、
陰ながら守ってやるよ。
お前がいつも、その笑顔でいれるよう。
馬鹿やって阿保やって鈍感でいれるように。
頑張って、守ってやるから。
『…幸せになれよ』
お前の幸せ、
祈ってやるよ、馬鹿栞…。
……お前は、
俺の居場所をくれた奴だから。
『ゆうきっていうの?』
『……そうだけど』
『ねっ、ゆうきってよんでいい?』
『……いいよ』
『やったぁ!じゃあしおりのことはしおりってよんでね!』
『……うん、わかった』
side勇紀*end
【俺の馬鹿な、親友】
by梓
すぺしゃる?おまけです!
皆さん、梓くん覚えてらっしゃいますか?
覚えてない方は
元祖マイホーム♪へGO→
梓くん編ですが、
勇紀編です。
梓くんから見た
勇紀をご覧下さい★
勇紀って奴は、初めから馬鹿な奴だった…気がする。
グランドにサッカー部に入部希望の1年が集まっていたときに、話し掛けられた。
『なあ、お前同じクラスの奴だよなっ!俺、勇紀!よっしく!』
その時はまだ、勇紀のことは知らなかった。
ただ、俺に話し掛けてくる奴は珍しい…。
『俺は梓。こちらこそよろしく』
笑顔がなんか純粋っつーか。眩しい奴だと思った。
それからサッカーの話をして…、勇紀は正真正銘のサッカー馬鹿だった(笑)。
昔から俺のこの顔はカッコイイらしく、善くも悪くもいろいろ言われた。
その為、俺は上手く世の中を渡る術を身につけていた。
面倒なことは面倒臭いから、
上辺を取り繕い上手くやってきた。
けど、物凄くつまらなかった。
だけど、勇紀と初めて話した時なんか思った。
こいつといると、面白くなりそうだって。
気付いたらいつも一緒にいた。
勇紀は俺の中で、かけがえのない存在になっていた。
そんな勇紀がある日、窓の外を愛しそうに眺めてた。
誰だってわかる。
“好きな子”を見ているんだと。
俺はそっと近付き、白々しく
『なーに見てんだよ?』
と言った。
『うわ!!』
勇紀は好きな子に相当夢中になっていたのか、すごく驚いた。
『好きな奴だろ?どの子だよ』
勇紀は渋りながらも、『…あいつ』と指さした。
『へ〜』
『誰にも言うなよ!!』
『わかってるって。告んないのか?』
『…無理なんだよ』
珍しく弱気な勇紀の表情は、とても印象的だったんだ――…。
俺が廊下を歩いてたら、自分の教室の入口に他クラスの女の子がいた。
あ…
あの子だ。
『勇紀〜!』
あ、勇紀呼ばれてる。
なんだ、知り合いだったのか。
もしかして幼なじみとか…。
俺は、凄く単純に考えてた。
『んだよ、栞』
『教科書貸して♪』
『は?なんの?』
『国語〜』
『無理〜。俺も次だし』
『勇紀はどーせ使わないでしょ?』
俺は2人の会話を聞いて思わず笑ってしまった。
栞ちゃんは勇紀のこと、よくわかってんなあ…。
なんだ。全然無理じゃねぇじゃんっ。…そう思った。
『勇紀!』
結局、教科書を貸してあげていた勇紀に話し掛けた。
と同時に、栞ちゃんもこっちを向いた。
『おー、梓!』
『…勇紀の知り合い?』
『そ、1番仲いい奴♪』
と勇紀が言った瞬間、
栞ちゃんは
『勇紀の友達っ!?』
と大声をあげ驚いた。
『まあな』
『嘘だあ!』
『なんだよ、それ!』
文句を言った勇紀を無視して、
『本当ですかっ!?』
と俺に聞いてきた。
予想外のことに、一瞬キョトンとしてしまった。
『あ…うん。そうだよ』
『嘘ーっ!』
『ほらなっ!』
2人はまた言い合いをし始めた。
なんだか、勇紀が栞ちゃんを好きな理由がわかった気がした。
栞ちゃんは勇紀と似てる。
表情がくるくる変わって、見てて飽きないし可愛いと思った。