「今日も御利益、御利益。」

「もぅ、やめてよ〜!!」


彼は毎朝、私の前でパンパンと柏手を打ち、頭を下げる。私を恋愛成就の神社のように崇めてくる。

最初はただ可笑しかった。面白い人だと思ったし、別に不快にも思わなかった。今でも不快には思ってない。

ただ、今は拝まれれば拝まれるほど‥‥切なくなるの。


「いいじゃん、減るもんじゃねーし?それに、もぅ日課になっちゃってるし。」


出会ったのは一年生の時。はじめは冗談のように始められたこの行動は、それから二年以上継続中。どうやら彼の日課になってしまったらしい。


「それだけ拝んで何にもないんだから、御利益なんてないじゃない。」

「そうでもねぇよ?!ラブハプニング満載ですっ!!」


私が呆れたように笑っても、美人君は私の大好きな笑顔を浮かべる。その笑顔が見れるだけで幸せだった頃に戻りたい…最近そんな事を思うようになってきた。


「じゃあ、菜々ちゃんは振り向いてくれそうですかぁ?」


高木 菜々《タカギナナ》
美人君の好きな人。

教室の窓際で友達と談笑している彼女に、ちらっと視線を投げてそうたずねた。