俯いてしまった美人君は何も言わずに、ただ時間が過ぎてく…

そんなに長い時間でもないのに、きっと数十秒なのに、永遠のように思えたのは…俯いたままの顔が曇っているから。

お願いだから、笑ってみせて?



「俺さ、高木を探したんだ。」

「うん。」


俯いたままだけれど、やっと口を開いた美人君。


「最初は音楽室、次は職員室…」

「菜々ちゃんブラスバンド部だったもんね、私も音楽室にいると思ったんだけどなぁ。いなかったの?」


出来るだけ明るく努めようと、笑顔で美人君に返事を返す。


「…ああ。」

「そっか…もう、帰っちゃったのかな…。そうだ、メールで呼び出してっ‥‥?美人君?」


そこまで言うと、美人君が私の腕をつかんだ。


「なぁ…俺、最低‥‥」

「な、に…?」


美人くんの声、震えてる。


「高木探すふりして、ラブの事ばっか考えて…」

「え?なに言って…」


その顔を覗き込んだら、射ぬくような真剣な視線が私を金縛りにさせた。


「好きだ…ラブの事。」

「だって、菜々ちゃん…」

「最初は好きだった、高木が。でも、いつも話聞いてくれるラブが気になりはじめて…でも、言えなくて。高木を好きなふりして、話しかけて…。結局言えなくて、諦めようって思った。けど‥‥」


そう言って美人君は白い封筒を差し出した。