「うるさい。
さっさと出ろ。」



扉が閉まろうとしたとき、思わずシャナイアは近くのテーブルに走り、水の入ったコップを持って外に走り出た。



警備が驚いて目を丸くしているのを横目に、シャナイアはドレスに土がつくのも構わずしゃがんでコップを男に手渡した。



「いらない。」



男は鋭い目でシャナイアを睨んだ。



「俺は汚れているんだろ?
善人面せずに華やかな世界へもどれよ。」



さっき、女性の夫が言っていた言葉を聞いていたらしい。



確かに酷い言い様だった。



「私は別に善人ぶってないわ。
ただ、水が欲しいと聞こえたから差し出しただけよ。」


「それを善人面っていうんだ。」



シャナイアは言い返さず、じっとコップを差し出して待った。