革の鎧をつけている。


男の人か。


ガントレットや指だけ出た手袋をはいたり、腰にはロングソードを佩いているところから警備ではなく冒険家らしい。



「早く私のドレスから手を退けてちょうだい!」



女性は金切り声をあげ、男を罵った。



「私の妻から離れろ!」



女性の夫らしき人に思い切り蹴られ、男は今度こそ倒れた。



「汚らしい…。」



憎々しげに吐き捨て、二人は立ち去った。



誰かが警備を呼んだらしく、男がつかまれて外へ出されようとすると、人混みはだんだん捌けていった。



「水…。」


ふいに聞こえた声に振り向くと、男がもう一度警備の男に言った。



「水…。」