あたしは、いまで言うヤンキーで、

周りの人は、あたし達のことをみるだけで恐がる。


あたしも昔は、そうだった。


バイクの音を聞くだけで恐かった。


あいつらから、かかってくる電話の音。

電話からの声。


「非通知」の文字。


初めての時は、「非通知」の文字に興味がいっぱいで、

一度だけ、出てみたんだ。


 
「もしもし」

  
「あの~すいませんけどぉ~大崎工業さんでしょうか~」

あたしは、なんとなくだけど、背筋がザワザワっとした。
言葉のおびを伸ばすこの感じ。


「はい。そうです。」


あたしは、この文字を答えるのに精一杯だった。


「そちらにぃ、杉川さんって方いますかぁ~?」
    
知ってる、杉川さんはあたしのお父さんの会社の従業員の人だ。
けれど会社の金銭トラブルでもう辞めている。と聞いていた。

「居ませんけど。」

なぜそんなにあっさりと答えてしまったのか、そのあと少し後悔した。

「・・・。」

返事が聞こえない・・・なぜだろうと、あたしはもう一度さっきより大きな声で

「居ません。」
と答えた。

すると、もろもろの不良声で


「「しらばっくれてんぢゃねぇ~よ!!」」




 
冷汗が身体じゅうに噴出す。
あたしは、なんて答えていいのかわからず・・・けど一応謝っておいたほうがいいのかな?と思い、泣きそうな声で

「すみません。あたしにはわからないので父に代わりますね。」

と冷静を装いながら答えるのがやっとだった。