くたびれ果てた森川が目覚めた時は朝の光が仏間に差し込んでいた
台所のほうからはリズミカルに食材を切る包丁の音がする
夕べの女か?
ガバッと森川は起き上がって台所へと駆け込んだ
「おはようございます。朝の支度は出来ておりますよ。どうぞ、お座りになってくださいまし」
老婆は森川にしわくちゃの笑顔を見せたが何故か紅をひいていた。
今すぐに婆を問いただしたかったが薄化粧をしている老婆の不気味さとうまそうな味噌汁の匂いにきをそがれてしまった。
昨日の女も、まだ布団の中に違いない。
なんせ昨晩は激しかったからな。
森川は、ニヤニヤしながら朝飯をかきこんだ。いい天気だ。
山の涼しい風を感じながら、森川は昼までゴロゴロと土間にいた。タバコは切れたが、婆の用意してくれた手巻き煙草が妙にうまく、森川は退屈しなかったのだ。
明日は家の周りを歩いて下界の様子を探るか。
昼飯を食べてから、森川は老婆に昨日の女のことを聞くことにした。
婆は一言、存じませんと答えた。