「うぁああぁ~!」
森川は悲鳴をあげて逃げようとしたが体がガクガクと震えて動けない。
老婆から若い美女になった志乃は、縄をあっさりと振りほどいた。
「朝になって、自分が老婆の姿になった時の驚きと言ったら!」
志乃は首を振って、大きな溜め息をついた。
「弥兵衛は、老婆になった私を見て、一目散に逃げ出しました。日が落ちて、自分の体が元通りになってから探しにでたのですが…。都めがけて逃げ出したのでしょう。全く見つけることができませんでした。」
志乃は寂しげな笑みを浮かべたが、森川に向き直ると媚びるような目線で話しかけた。
「でも、あなたが来てくださった。日が出てる間中だけ、辛抱してくださいな。夜に全部、お返ししますから」
志乃は、森川にしなだれかかった。
「まずは楽しみましょう。ねぇ、うふふ。あらあら、こんなに震えてらっしゃる。夕べは頼もしくていらっしゃったのに…」
「ひっ、ひぃ…」
森川の悲鳴は、もう声にもならない。
志乃の指が森川のベルトに手をかけたとき…ドン!!
「きゃあ!」
志乃を突き飛ばし、森川は無我夢中で外に向かって走った!
とにかく恐ろしい。あれだけ人を殺してきたのに…。
未知への恐怖にはかてない