俺は、彼女のことが忘れられず、毎日毎日、ボーと過ごしている。

外にもほとんど出ない。

そんな俺を心配して、大学の友達の起史は、時々、

「たまには飲みにでも行こうぜ」

なんて、誘いに来たりする。
でも、そんな起史をいつも、そっけなく断っていた。

今日も、誘いに来たんだけど、やっぱり、そんな気になれず、

「いや、やめとく」

と、断ると、

「そっか」

いつもなら、そう言って、あっさり引き下がって、帰るのに、今日は、

「いや、そんなこと言わずに、行こうぜ」

って、ちょっとひつこく誘ってきた。


しかたなく、いや、

「これから、ちょっと出かけるから」

そう言って、玄関を出て扉を閉め、

「じゃあな」

起史を振り切って行こうとすると、

「待てよ。出かけるってどこに行くんだよ」

って、俺の腕をつかんできたので、

「どこでもいいだろ。離せよ」

硬く握ってた起史の腕をむりやり振りほどき、

「待てったら。おい!ひ・で・と・しー!」

起史の叫び声を無視して、走って逃げた。