翌日の早朝、アキはただ虚しく広いだけのマンションの一室を、後にした。


もうここに来る事はない。


何だかいつもより、外の空気が美味しく感じた。


『すいませーん!ひまわりの大きな花束作って下さい!』


アキが足を運んだのは、街のはずれにある小さな1件の花屋。


そしてひまわりの大きな花束を抱え、アキはある場所に来ていた。


――今日は健吾の命日。


アキは健吾の墓前に、ひまわりをそっと置いた。


『ひまわりって場違いかな?』


アキは辺りを見渡して、まるで健吾が目の前にいるかのように微笑んだ。


「バーカ」


そんな健吾の笑い声が、アキには聞こえた気がした。


『…ごめんね』


『ねぇ、健吾。あたしの事許してくれる?あたし最低だよね』


アキは俯き悲しく微笑む。


『…あの日言ったこと嘘だから!…健吾なんかと結婚しなきゃ良かった…なんて』


アキの目に涙が溢れ出す。


『あたし健吾と結婚して、ほんとに良かったよ!…幸せだった』


『…健吾も幸せだったのかな?』


夏の温い風が、アキの髪を揺らす。


アキは涙を手で拭い、とびきりの笑顔を見せた。


『これからもあたしずっと、健吾だけが好きだから。…だからあたしがおばあちゃんになっても、ずっと傍で見ててよね!』


温かい風が、ひまわりの花びらを優しく揺らす。




「俺もアキと結婚して、幸せだったよ」




眩しい太陽の光が、いつまでも2人を温かく照らしていた。




花言葉。

【ひまわり】

ずっとあなただけを
見つめています。