――警察の話では、健吾は車で山道を上る途中、ガードレールを突き破り、車ごと崖から落ちたそうだ。


ブレーキ跡も残っていない事から、警察は健吾が、自らの意思でガードレールを突き破った可能性が高いと、言っていた。


つまり自殺。


友達の裏切り。


数千万の借金の肩代わり。


そして


――健吾なんかと結婚するんじゃなかった


あの時のあたしの言葉が健吾を追い込んだんだ。


直感的にそう思った。


アキはそれから自分を責め続けた。


そして健吾の肩代わりした借金は、妻であるアキのものとなった。


アキはせめてもの健吾への償いだと、その借金を1人で背負い返していこうと決めた。


それからアキは、会社を経営している中年の男と、愛人関係になった。


月に90万円を貰う代わりに体も心も全て男に捧げた。

月90万円の女。


それが高いのが安いのかなんてアキにはよく解らなかった。


そしてそのほとんどを、アキは借金の返済にあてた。


それでも心には、健吾への罪悪感しか残らなかった。


――こんな事して健吾あたしの事最低だって、思ってるよね。


でも特技も資格も、何もないあたしには、こんな方法しか思い付かなかった。


健吾ごめんね。


そしてその借金の返済が、今月分の90万円で終わる。


――今日で最後なんだ。