意味を聞こうとした時、窓の外では馬のいななきは遠く、今度は女達の狂騒が聞こえる。

窓下のきらびやかな女性達へ目を向け、もう一度記憶していた風景と目の前に見える風景の違いを目の当りにして、私は時間の壁を越えたのかもしれないと初めて認め始めた。

あれ、
もしかして、一人?

急に自分が頼りない存在に思い始めた。

多分、私はこの世界で一人

どんなに人がいても

言葉が通じても



…私を知っている人は誰もいない。


ドレスのスカートを握りしめた。
ハイトさんが選んでくれたドレス、確かにあれは現実だったはず。
”-------様”
ハイトさんは私の名前を呼んでいたはずなのに。

ユウだっていた、ミュウだっていた。
赤ちゃんだって現実だった。

でも、思い出せない。

私の名前はなんだろう…。

ガラガラと馬車が石畳を走る音。
笑い声は消え、馬車と馬の足音だけが聞こえた。
人々はお辞儀をして道をあけている。

「マイマール卿か…、