「そういえば…、どうして肖像画は残ってたんだろう?」
不思議。だって名前も消されるような人だったのに。
あの絵だって、焼かれていても不思議ではないもの。
「ドリュー様がご宿泊されているお部屋から、発見されました。70年前の補修工事の際に。窓際の隠し棚の中に絵だけ丸まったままありました。」
「えっ、そうなの?!どうして?!」
「どうも、あの絵が書かれた部屋はあの部屋の様なのです。当時城主だったリムレット伯爵が王子と懇意にしていたか、それとも幽閉場所だったのか…良くわかりません。」
「もしかして、説明されませんでしたか??」
「…はい」
「…シャトーの目玉なのに……」
ふうぅゥ、と深くため息をつくハイトさん。
残念に思ってるの??
ん?あれ、怒ってる?
太陽が、建物の隙間から見え隠れする。
広場を抜けて、角を曲がる。
夕暮れ近い光に照らされている城が見え始めた。
遠い昔に王子が居たかもしれない、リムレット伯爵の城。
人の居ない城で一人きりで過ごす王子を想像したが、巧く想像出来なかった。
肖像画で窓の外を見る王子の姿はこの悲劇の象徴の様で、それ以上の顔は思いつかなかった。