私は王子の姿を見上げながら、どんな気持ちでこの部屋で肖像画を描かせていたのだろうか? と切ない気持ちになった。
美しい横顔を見て、飛行機の事を思い出した。

「とてもハンサムな王子様。モテたんでしょうね??」
と言うと

「…そうですね、ファンヌ様とも政略結婚と言うより、当時の結婚では珍しく恋愛結婚だったようです。現に、皇太子は隣国の位の低い貴族の娘を所望するのは、いささか身分違いですから。」

私は、不思議に思い、
「え、でも、隣の大公の従兄弟?なんですよね??」

「ええ、そうなんですが、どうも、輿入れが決まってから、血筋を合わせる為にエルディンガー大公自ら御決めになった養子縁組の様です。多分、様々な女性とご縁はあったでしょうね。出なければ、ファンヌ様ともお知り合いにはならなかったでしょうから……。」

「国を超えて、身分を超えた愛だった…てっ事ですか?」

係の人は、小さくうなずいた。

「なのに、…死刑だなんて……。」

銀髪の騎士を見上げ、国を失うより名前を失うよりも、その事の方が一番悲劇だと、感じずにはいられなかった。