改めて、エントランスのをぐるりと見渡す。
中央に、大きなオーク材のテーブルにバラのオーナメント。
積まれた石でできた暖炉、寓話を織り込まれたタペストリー。
燭台とろうそくが、あちらこちらに置かれている。
窓から注ぐ太陽の光さえ、なんだかクラシックな感じがしてしまう。
清潔でチリ一つない調度品をみると毎日、どれくらい人がここでお掃除してるんだろう。
でも、
全然、人の気配が感じられないの。人影さえない。
ついさっきまで、ここで紅茶を飲んでた人だっていただろうに…。
紅茶の残り香さえしなくて、温度も部屋より低いのか肌寒い。
なんだろ…、古いお城に人の体温や気配を吸い込まれているみたい。
ちょい、不気味だね…。
「お待たせしました。玄関に車をお回ししました。」
はうっ!と悲鳴とも言えない声を喘げてしまった。
消えたドアとは、反対方向から現れたからびっくり。
執事は、??と頭をかしげ、困った様にハニカんだ。
ふふっ、笑うとますます綺麗ね…
てっ、見とれてる場合ではない!絶対変な人だと思われたなぁ。
”ガシュ”
黒い執事はあまり気にせずササッと、私の前を歩き大きな玄関扉を開けた。
白い階段の前に、深い茄子色のバンデンプラスプリンセス。
メルセデスよりも乗りご心地が良いと言われて、イギリス貴族、淑女のセカンドカー。
私は、執事が開けてくれた後部座席へ、執事は運転席へ。
渋い赤色の革シートに乗り込んだ。
城手前のローズガーデンを横に抜けて門まで進む。
細くて大きなハンドルを握り、クラシックカーを運転する執事は、映画のワンシーンの様に見えた。
「では、ロイヤルレガリアまで参りましょう。」
王室資料館、通称レガリア。
現在では、絶えてしまった悲劇の王族
歴史に傷跡のみを残して