「嘘…、信じられない」

そう豪語して、ちっとも受け入れてくれない真愛の腕を引き、駐車場まで来た道を戻る。


「嘘だ…。誤解とか…、違うとか。信じられないっ」

…誤解も6階もないつーのっ。5階はお前の家だろ。


「…ほんとしつこい」

「だって…」

「ほら、乗って。帰るよ」

助手席に押しやり、運転席に乗り込んだ。


「もっかい言うけど…、俺。真愛のこと…、好きだから」

未だに放心状態でポーッとしている真愛の唇に、軽く重ねた唇。


冷え切った車、冷たいハンドルに、全身が寒気立つも、重なり合う唇に頭が熱を帯びる。


離れた唇を名残惜しむ俺は、顔を近づけたまま真愛に聞いた。

「…わかった?それとも、…もっかい言う?」

「もう一度…」

頬を赤く染め、おねだりする子供みたいに言うから、意地悪したくなる。