これだけいると実感する。

ざわめいていたホール内が、一瞬にして物音一つなくなった。


俺は会場全てを見渡す。


瞼に焼き付けるように。

決して忘れないように...。



「初めまして。俺が神崎梅亜です」


こんなに沢山の人の前で話すのは初めてだ。


なのになぜだろう?

不思議と緊張しない。


これから起こることが待ち遠しい。

早く歌いたい。


「えーと……こんなにも沢山の人の前で歌うのは初めてで……だから、早く感じてみたいんだ、ライブってのを」


沢山の人の前で歌う。

それはまだ未知の感覚。


「始めに一曲歌っとく。ありがとうの気持ちを込めて……青空メロディ」