「悪い、……急に仕事が入ったから今から出かけてくる」
まさか千穂のところに行くとは言えないので、
後ろめたい気持ちがあったけど、仕事だと嘘をついて家を出ようとした。
その時。
「……ッ!竜人!」
愛花が突然俺の腕を掴んできた。
「ん?……どうした?」
俺は愛花のほうへ振り向いて、ニコリと笑ったつもりだったけど、ちゃんと笑えていたか正直自信かがない。
「えっ…と……」
愛花は何か言おうとして、すぐに口をつぐんだ。
一瞬2人の間は沈黙がながれたけど、
「……頑張ってね!!」
今にも泣きそうな顔をしながら、笑顔で愛花は言った。