「何か用かしら?」



少し不審な物を見るように、その人は私を見た。




まるで、自分がこの家に住んでるような口調で。




「いっ、いえ……。間違えただけです!ごめんなさい!!」



そう言って、私は走りだした。



「あっ!?ちょっと!!」



後ろで声がしたけど、聞こえないフリをした。




私は泣きながら、ただがむしゃらに走った。



どこにも、行くところなんてないのに。




鉛色の空からは、まるで私の涙のように、


パラパラと雨が降ってきた。