いた…
こんな時でも教科書を片手に、こちらにゆっくりと歩いてくる。
どんな姿も、さまになってかっこいい。
ちゃんと伝えるって決めたんだから!
意を決して進もうとした時、和也クンの後方から1つの影が飛び出した。
「待って!」
あれは……
昨日の綺麗な人?
昨日の放課後、和也クンに言い寄っていた人だと思う。
あの人が、何故ここに?
「何でついて来んの?」
和也クンの冷たい態度に、少しだけ安堵する。
和也クンが望んでここに連れてきたわけじゃないんだ。
それに、いつも見せてくれる優しい表情は、私にだけだもん。
嫉妬して醜いのかもしれないけど、優越感は拭えない。
しかし、そんな余裕も、次の彼女の言葉を聞くまでだった…
「私、本気で宙良クンが好きなの!」
ッ?!
「俺は好きな人いるから。
ついてこられると、邪魔。
どっか行ってくんない?」
「ひどっ…
あたし……宙良クンのこと絶対に諦めないからねッ!」
その人は叫んだ後、泣きながら去っていった。
私はそれを、焦点の合わない目で追うしかできない。
やっぱり、和也クンは宙良クンだったんだ。
今まで、ずっと私を騙してたの?
何で、嘘を付く必要があったの?
私の頭の中は、真っ暗な闇でいっぱいになっていった。
*