走り着いたのは、保健室。


少しの望みをかけ、開いたドアからそっと覗いてみたけれど、中は誰もいない。



やっぱり…




いつも和也クンが勉強していた机には、教科書やノートが開いたままになっている。


その横、私が座るところはちゃんと空けてあって、"私のことを待っていてくれたのかな?"なんて考えてみる。




そんなわけないのに…




和也クンの定位置に座って、残り香を探してみる。


ソファーは冷たくて、和也クンがずいぶん前からいなかったことがわかる。

それでも、ほんのりと愛用の香水の香りがする。


いつの間にか、これが安心する香りになっていた。


それほど、和也クンに惹かれていたんだ。





どぉしよう…


このまま何も見てなかったことにして、和也クンの帰りを待っていようか。


裏庭で何をしていたのか、聞く勇気はないし、図々しく思える。



このクッキーも。


一生懸命作ったんだけどな。



『はぁ……』

―――バサバサッ



*