「それは……」


クシャっと顔を歪ませ、ばつが悪そうに私の目を覗きこんできてきた。



「こんなこと…調子良いって思われるかもしれないけど。


ただ、吉川と話がしたかったんだ。」



『な…に、それ?』



「入学してから、知らないやつから番号とか聞かれて、嫌気が差してたんだよ。


そんな時吉川と会って、名前知ってるのに俺だって気が付かないから。



面白い子だなって、もっと知りたくなったんだ。

一緒にいて楽しかったし、本当の名前言ったらそれが壊れそうで。


騙すつもりはなかったんだよ、本当に。



ただ、もっと吉川と一緒にいたかっただけで…


でも……」



長い腕が伸びてきて、私の頬にそっと触れた。

半分乾いた涙の跡を、冷たい指がなぞる。



「こんなに吉川を苦しめるなんて…



本当ゴメン。」




*