「………母さんのこと言ってるのか?」



「…………」




聖のお父さんは答えなかった。



少し苦い表情を浮かべたまま、聖を見ていた。



聖はというと、そんな父親の姿にいらだっているようだった。




「あんたは母さんのことなんて考えてなかったじゃねぇか………!」



「……………」



「病院で、今にも死にそうで苦しんでたのに、母さんは………

それでも見舞いに来ないあんたを、仕方ないって…あの人は仕事をしている方がいいんだって…

何がいいのか理解できないって俺が言っても、いつも笑顔で………そう言ってたんだぞ………」




聖の拳が震えていた。



怯えや恐れからじゃない。



怒りから、強く握った拳がわなわなと震えていた。