ヒュオォ、
……強い横風が、私の髪とスカートの裾をばたばたと煽る。痛いくらいに、足の先が冷たい。ガクガクと無意識のうちに小刻みに揺れる脚に腕の震えまでが呼応し始め、ついには胸の内さえも、底知れぬ冷たい闇に犯される。
私はたまらなくなって手摺りから手を離す。
一歩、二歩、と蹴るように後ずさり、その場で空を仰ぐようにへたり込んだ。
怖い。
初めてこの場所に来たときも、点と変わった世界を目の当たりにして、身体が凍ったように動かなくなった。その日、私は本当に死ぬつもりでここに来た。少なくとも、その時の私自身は。それでも、遠く、遙か遠くに広がる地上の世界に、死ぬと言うことを間近に感じた時、私の身体は言うことを聞かなくなった。
怖い 怖い 怖い 怖い こわい こわい
私はついに、隣り合わせの死から逃げ出すように屋上の中央付近まで走り戻ると、うずくまって大粒の涙を流した。後から後から溢れては、止まることを知らない涙。それは、恐ろしいまでに私を包む恐怖心からでたものなのか、自分の弱さが悔しくてでたものなのか、判断することができなかった。私はただ、酷くゆがんだ視界の中で、頬を伝い、床についた手に落ちる涙を、じっと、初めて知った本当の怖さというものを噛み締めながら見詰めていた。