蒼馬は構えを取り、顔だけルイに向ける。

「オレと戦うために来たんだろ。邪魔者を片付けて来るまで待ってろ」

 姿なき敵に向き直る蒼馬に、ルイは声を詰まらせる。

「ごめん…任せる…」

 その表情は安堵の色を含んでいた。

 しかし、蒼馬は内心戦々恐々としていた。

(しまったあ…カッコつけていらんことを…)

『あんな見栄を切りおって、影も形も見えぬ敵と一体どう戦うつもりなのじゃ、主よ』

 太刀風の呆れ声に、蒼馬は半ばヤケになる。

「ああもう、出てきやがれえぇいぃっ!」

 渾身の力で金槌を振り下ろす。

 すると、かなり離れた場所の砂が弾ける。

 その吹き上がる砂の中に、蒼馬は確かに動く影を捉えた。

「いたっ!太刀風、風神鎚だ」

『承知した。遠いゆえ、初手は当たらぬと思うがのう』

 蒼馬が金槌を掬い上げる様に振るうと、強烈な旋風が巻き起こる。

 ゴオォウゥッ!

 砂が吹き散らされた後には、何もいない。