真っ暗な空、どしゃぶりの雨。

水浸しのコンクリート、泥だらけの足。

ずぶ濡れの体、傘の無い手。




顔を上げると厚い雲に覆われた空は雲が切れ、糸が垂れるように光がさし始める。雨はやみだし、辺りはみるみる明るくなる。顔を流れる雨は徐々に渇きだすけど、私の顔は濡れたまま……流れる涙は止まらない。


「もうイヤだよ…」


お母さんと喧嘩をした。我が家は両親が教師をしている。別に私の成績が悪いわけじゃ無い。ただ…頭のいい兄がいるから、お母さんには私が物足りないんだ。私はお母さんに口答えをした事が無かった。今日が初めてだ…。


頬に手をあてて唇を噛み締める。


お母さんは私をぶった。初めて叩かれたと思う…。


「お母さんのバカ…。」


雨がやんだ空を見ながら小さく呟いた。