実々が去っていく俺の姿を見ていることを背中に感じていた。
いつもはあんなことないのに珍しい。
きっとさっき聞いた話以外に何かあるのかななんて考えてた。
角を曲がろうとしたとき、初めて実々の叫ぶ声が聞こえた。
「やっぱヤダ!今日だけでいいから………帰んな!」
お願いしてるわりには命令口調。
思わず笑ってしまった。
そしてゆっくり実々まで歩いていく。
「寂しいの?じゃあ、今日はとことん付き合いますよ。運良く明日は遅出なんで。」
そう言うと、とても嬉しそうに笑った。
実々、君の世界を変えてあげられない俺は、君にとってどれだけの価値があるのかな?
だけど、こうして君のわがままを聞いてあげることも話を聞いてあげることは出来るよ。
だから、だからね、実々。
そばに居させて欲しい…。
これは愛なのか何なのかわからないけど、無力で情けない俺を実々のそばに置いておいてよ。