辺りは真っ暗で、建物も何もなくて、一面真っ黒な場所にぽつんと独りぼっちで立っていた。
遠くに誰かいるようだけど、それが誰かわからない。
でも、独りじゃないってわかって安心した。

「あのー!」

出来るだけ大きな声で話しかけた。

するとその人は徐々に近付いて来た。
隣りには小さな子供がいて、段々その人物の顔がはっきり見えてきた。
男だった。

その顔に私は心臓が止まるかと思った。

私の人生の中で一番思い出したくない顔。
近付いてくるそれから、逃げ出したいが体が思うように動いてくれない。

どうすることも出来なくて、目を逸らしたくてもその目さえ、石になったように動かない。

「泣かないで…」

男の隣りにいた子供がそう言って、私の手を握った。

そう言われて気付いた。
未だ閉じられずにいる目からこれでもかってくらいに涙が溢れてくる。
その握られた手がとても温くて、なぜかとても切なくなる。

「……泣いてない…」
そう言う私ににっこりと微笑んだ。

「実々は独りじゃないよ。そのうちきっと分かるよ。」

そう言うと子供は消えていった。