その沈黙を破ったのは沙也加だった。
俺の顔を見るわけでも、俯くわけでもなく、どこか一点を見つめて話始めた。

「あのね、率直に言うけど、私たち別れた方がいいと思うの。翔ちゃんが好きだけど、もうそれだけじゃ続けていけないよ…。」

遠回しだけど、言葉の意味がわかった。
自分は俺が好きだけど、俺は違うと言いたいんだろう。

「…………。」

俺は何も言えなかった。
何を言っていいかわからなかった。


「私ね、気になる人がいるの。友達の友達でね、翔ちゃんみたいにいい男じゃないけど、すごく優しい人なんだ。何日か前に告白されたの。」

「……うん。」

「嬉しかった。だから、断らないで考えさせてって言ったの。」

人間はどうしてこうも勝手なのだろう。
向き合おうとしなかったのは自分なのに、離れていこうとすると手放したくなくなる。

でも、言葉にはできない。
きっと同じことを繰り返してしまうから。