最悪…。
よりによってこんな日に。
買い物袋を握る手に力を入れて、その男の待つアパートへとゆっくりと歩いた。
私の姿に気付いたらしく、こっちを真っ直ぐ見ている。
笑顔でもなんでもなく、ただ私を見ている。
あと5メールというところで、足を止めた。
自然と眉間にシワが寄る。
「何しに来たの?」
怒りにも似た感情を込めて、男の目を見て言った。
「………納得できないからさ。話したいと思って……。てか、そんな怖い顔すんなよ。」
ふっと、悲しそうに私に笑顔を向けた。
「私は何も話すことないし、こんな風に待ち伏せされるの迷惑だから。」
男の横を通り抜けて、自分の部屋に向かう。
だが、そこで腕を掴まれた。
「離して。」
悪魔でも冷静に自分の腕を掴んでいる手を見て言う。
「無理。」
腕を掴む力が強くなる。
こうしてる間にも、太陽は容赦なく照り付ける。
暑さと、歩いた疲れでどうでもよくなった。
「………わかった。」
一言だけ言って、男を部屋に招き入れた。