「…なんで、そんなこと…」

そう言うのが精一杯だった。

「うぅ~ん、早く言うとぉ、現実逃避?かなぁ~。セックスしてると、嫌なこととかぁ、忘れられるし。」

そんなことで簡単に男と寝る実々の気持ちが全く理解できなかった。

「だったら彼氏作ったら?」

「………そんなのいらない…。」

そう言われて、俺には想像できない程のことが実々を支配しているんだと、実々の表情でわかった。
だけど、そんなのやっぱり納得できなくて、色んな気持ちがグチャグチャになって気付いたら涙が溢れてた。

「やめなよ、そんなの。……間違ってる。」

そんな俺の頭を撫でるだけで、そのことについては何も話してはくれなかった。

それから何度か説得したりもしたが、聞く耳を持ってはくれなかった。

実々が俺に話したのは酔った勢いだったのか、それとも何かを訴えていたのかは分らない。
でも、何らかのメッセージだったのかなって俺は思ってる。