残業と言っても、次の日の売り出しの為の、価格表示を作成したりっていう簡単なものだ。
“お疲れ”と言って帰っていく人達を見送って、仕事をするために事務室に向った。
そこには、相変わらず無表情で俺のやろうとしてた仕事を淡々とこなす実々がいた。
「あれ、黒田さんも残業?」
「店長に手伝ってやってくれないかって言われたから。」
俺の方を一度も見ることなくそう言った。
それがなんとなく嫌味に聞こえた。
「あっ、なんかごめんね。俺のせいで黒田さんまで残業になっちゃって…。」
「別に。もともとは片倉くんの仕事じゃなかったんだし。謝る必要ないんじゃない?」
“残業引き受けたのは私の意志だし”と相変わらず無表情だったけど、悪い人じゃないのかなって思った。
その日からなぜか黒田実々という人間にすごく興味をそそられた。
美人でもなければ可愛いわけでもない。
おまけに無愛想だし…。
だけど、黒田実々という人間を単純にもっと知りたいと思ったんだ。