だけど、私たちを繋いでいた糸が少しづつほどけていった。

いや、最初からそんなものなかったのかもしれない。



高校3年の秋。
事件が起こった。


それは、私と諒二の間に赤ちゃんが出来たということだった。

諒二はすごく喜んで、私に産んで欲しいと言った。
そう言ってくれたことが嬉しくて、私もそうしたかった。

だけど、私は怖かったんだ。


十分に親に愛されたことのない私が母親になんかになれるのかって。
ちゃんと生まれてくる赤ちゃんに愛情を注げるのかって。


そして、いつか諒二と私が、父と母みたいになってしまうんじゃないかって。


“二人の未来を見たい”

そう言った諒二が愛しかった。

愛があれば私たちなら何でも乗り越えられるんじゃないかって本気で思った。

愛し愛される喜びを知った。

悲しい涙しか流したことのない私が、諒二に出会ってからは嬉しい涙を流すことができるようになったから。