「実々!」
その声にハッとして我にかえる。
その声の主は傘を差しながら走ってきた。
翔だった。
目の前で立ち止まって、傘の中に私を入れた。
「どうしたの!?こんなにずぶ濡れで…。」
「…………………。」
翔の顔、声がすごく懐かしく感じて、とても安心した。
何も言えなくて、俯いたままで、翔のTシャツの裾を右手で掴んだ。
そのまま肩に頭を軽く乗せて深呼吸した。
「とっ、とりあえず風邪ひいちゃうからさ、中に入ろ?」
そう言って私の肩に置いた手が温かかった。
顔を上げると、眉を下げていつもの心配してるときの顔があった。