私の歩く足音に気付いたのか、勢いよく顔を上げた。
長い髪の毛からは雨の滴が落ちていて、服は肌に張り付いている。
いつから待っていたんだろうか。
こんな雨の中、バカみたいに…。
貴弘は私の顔を見つめるだけで何も言わない。
「……バカじゃない。こんな雨降ってんのに…。」
「ははっ、……本当だな。」
「………いつから居たの?」
俯いたままで何も答えなかった。
こうしてる間にも雨は激しくなる一方で、二人ともずぶ濡れになる。
この雨のせいなのか、雨に打たれる貴弘の姿はとても悲しいモノに見えた。
捨てられた子犬のようで、昔の私を見ているようだった。
そう言えばあの日もこんなふうに、激しい雨が降っていたっけ。
呑気にそんなこと思ってしまった。