残された気持ちダケ…

今日、
言おう。

思ったときには
遅かったんだ。

今日は
一度も
先輩に会ってない


廊下も、
階段も、
教室も、
保健室も...

さりげなく
探したのに

今日、
会えなかった。

何かに邪魔されたみたいに
会えない、
寂しい日が続くよ...。
先輩の
大きな背中。

後ろ姿を見ただけでも、
心は弾んむコトが
出来たのに、
今日は
それさえも
出来なかった。

ねぇ、
先輩。

私の
気持ちに
ちょっとは
気付いてるのかな?


言わなくても
伝わってるかな?
先輩を
見つける
速さなら、

絶対
誰にも負けないよ。

オリンピックにも
出れるよ。


のび太が
寝る速さよりも

きっと
速いよ。

自信、
あるよ。
~土曜日~

泣き腫らした
瞳が赤い。

心が痛い。

夜も眠れなくって、
目の下には
クマ。

だって、
嫌な夢、
みたから。

暗闇の中、

私の手だけが
見えて、

私は
必死に
手を伸ばしてた...

『行かないでー...』

暗闇の中で

私の声だけが
響いてた。


嫌な夢。
今日は
卒業式の
準備で
登校。

卒業式の
予行もあって、
三年生も
昼まで
登校。


腫れた瞳を
どうやって
直せば良い?

こんなに
泣いた夜は
無いよ。


湿った枕と
暖かい毛布に
包まれながら
考えた。

体調は
優れなかった。

体に
だるさが
残ってた。

泣き疲れてた。

でも、
学校に行きたかった。

こんな真っ赤な
瞳でも、
今日は
先輩を見ることが
出来るから。



...先輩に、
今日は会えるの。
朝、
予行だからといって
適当に並べてある椅子に
深く座って、
予行演習。

入場の
音楽が流れる。

吹奏楽が
吹く、
『旅立ちの日に』

キレイな
フルートの音色。

三年生が次々に
真横を通っていく。

ねぇ、
この日
初めて、
背が低くてよかったって
思ったよ。

クラスで一番
背の低い私は

先輩が
一番見える、
通路側。
『卒業証書、授与。』

聞きなれない
校長の声が
体育館に
響く。

名前を呼ばれる度に
立って歩いてく
三年生。

先輩の
名前、
呼ばれたら、
明日、
きっと

泣くだろう。



『はい!!』
あ...
先輩の声...。





ヒクッ...!

急に
息が
し辛くなった。

下まぶたに
溜まっていく
涙。

ねぇ、
まってよ、
私。

まだ、
本番じゃないよ??
必死に
堪える涙。

周りの目が
気になるけど
見えない。

我慢して、

今日は...

明日は
流しても
許すから...

ねえ、
お願い、


誰か、
止めてよ...。

どうにも
ならないよ...。






先輩......。
先輩が
仮の
証書を受け取って
椅子に座るまで、

涙、
堪えた。


溢れてくるのが、
流れないよう、
手で拭った。

ばれてないかな...。

おかしいよね...。



まだ、予行なのに。