何でそんなこと言うと、そばに居る人に自分の感情を見通されるのが怖いんだ。

つまり、恋いをする勇気がない。
「何でまたお酒飲んじゃったの?」ーー不自由になる。
「この女は誰?」ーー携帯まで見られている。
でも、優しい女もさすがにこの世の中居るはずだけど、僕にはこんな人に出会うチャンスがない。

「信じてくれ!」僕も僕の女に優しくそういいたい。
でも、そんな人がまだいない。

楽しくないくせに笑ったりする。
寂しい時も強がったりする。
僕はそういうことがとても上手。
だから、見られるのが怖いんだ。

「なんで?そんな自分になっちゃったの?」そう聞かれるのが怖いんだ。

僕は今の僕のままでいいんだ。

「零崎君、今日って飲みに行かない?」会社の先輩の小百合さんに誘われた。
小百合って名前を見ればわかる。年は30代、夫と別居。
だが、セックーシで、いつも美容院に通っている。
会社のエリートで、男の考えていることもよくわかる。

男のハンターとも言える
こんな女が僕には遠慮しとく。

「今日は親戚の子供がやってくるから、早く家に戻らなきゃ。」

そういえば、これは言い訳じゃない。
小さい頃となりですんでいた吉本家の娘が大学入学でこっちへやってくる。
挨拶というか、おみやげを持ってくるっていうか、親がお見合いをさせられたというか。どちらかわからない。

「じゃいいよ。」小百合さんは微笑んでそう答えて来た。

「吉本愛。」気づいてないうちに、この名前を声出したように言い出した。
「何?」小百合さんはたずねた。
「あー別に。ごめん、今日はここで失礼します。」って、残業せず家に帰る。

「吉本愛」こんな娘いたのかい?正直、小さい頃で引っ越した僕は隣の吉本がいつも優しく笑っている吉本おばさんしか記憶には残っていない。

「吉本愛か」今日は気づかれず、この名前何度も繰り返して呼んだ。