彼女を抱き起こし、初めてこの部屋に入ってきた。
なのに、すぐこの部屋のことを慣れてきた。
すごく不思議な感じ。

大体、よく見ていたから、ベッドの場所とか、彼女がよく水を飲んでいた場所とかよく知っている。

彼女をベッドに置いてから、水を取ってこようかと思いながら、足はもう勝手に体をコップの所へ引っ張ってく。

よく分からないけど、気づいたら、この手はもう彼女の好きなコップの所へ・・・
何故だろう。

いいのか。こうすれば。
自分が迷っていた。
そもそも剽悍な人じゃないけど、言われたら、見知らぬ人だね。

だから、もう一回、彼女の元へ戻った。
冷たいタオルを頭に被った。
「おい・・・大丈夫?僕のこと分かるかい?君は、熱だようで、僕、自分の部屋に戻って薬持ってくるからね、それまで、もうちょっと辛抱して。」

彼女は目を閉じるまま、何もいい帰ってこなかった。
黙っているのは、反対はないってことだろう。

彼女の顔がすごく赤くて、唇も。
赤ちゃんみたい。

早く薬を飲まさないと思いながら、立ち上がったところ、彼女は僕の手を握った。

「あー君、どうした?大丈夫。」
顔を近づいて様子を見ようとしたとき、彼女は急に僕をキスした。

この熱いキス。
唇から伝わって来たこの熱は僕の心を沸かした。
この一瞬。

少し戸惑うと思ったけど、嬉しい。
キスしてくれたってことは僕のことを信じているよね。

でも、彼女はどんなに寂しいだろう。
そう思いながら、彼女は何かを思い出したように、
目が落ち着きなく辺りを見回していた。

どうしたのだろう。
この不安な気持ち。
そして、目が涙で潤んだ。

遠くまでどっかの未知の何かに目をやって顔を引きつらせたそのとき、涙が溢れ出した。

その時の僕は、彼女の顔の涙の筋を指で辿った。
彼女を慰めたかった。
この気持ちしかなかった。