マンションに戻ると、あたしは服を着替えるのも忘れてベッドに倒れこんだ。
枕もとには、先日レオの家から勝手に持ち帰ってきた卒業文集。
……あたしはあの日から毎日、必ずといっていいほどこの文集を手に取っては、何十分もぼんやりと見て過ごしていた。
レオが書いたボールペンの文字を見ると、心はむずがゆく騒ぐけれど、なぜか文集は愛しくも思えた。
起き上がる気力もわかず、腕を延ばしてテレビのリモコンを取りスイッチを押した。
たまたまついたチャンネルで流れていたのは朝の報道番組。
それをBGM代わりにして、あたしは再び卒業文集をただぼんやり見つめた。
テレビからは、品の良い女子アナの声が流れている。
「では、本日の特集です」
短い音楽が入り、男のナレーションが流れ出す。
何気なくテレビを見ると、渋谷のスクランブル交差点の映像を背景に
“特集! 現代に蔓延する、依存症の女たち”
そんな文字が、でかでかとおどっていた。