「名前は?」
「さくらです」
「ふーん、似合ってるね」
リョウさんのその言葉に、あたしはあいまいな笑顔を作る。
不意に、あたしはレオを思い出した。
初めてレオに名前を教えた時、「似合わない」といきなりダメ出しされたこと。
思い出すと笑えてきて、無意識にほおがゆるんだ。
しばらく4人で飲みながら他愛ない会話をした。
鼻ピ女は話してみれば結構面白い奴だったし、リョウさんもなかなか気さくだし、ミカは相変わらずハイテンションだ。
あたしはトイレに行くと言って席を立ち、化粧室で鏡をのぞき込んだ。
ミカに巻いてもらった髪はキレイにはずんだままで、アルコールで上気したほおは、どんなチークより完璧だった。
……これはあたしじゃない。
なぜかそう感じた。
あたしは水道の水を手のひらにため、乱暴に鏡に浴びせてみた。
水はすぐに筋になって流れ落ち、鏡に映るあたしの顔をみにくくゆがませた。
それを見て、ほっとした。