若い男物の靴しか置いていない玄関を上がり、そのまま奥の階段を上る。
「親御さんは?」
「オレ独りだよ」
「こんな家に独りなんだ。ワケあり?」
「多少ね」
「ふーん、ちょっと意外」
それきりレオは家庭のことを語ろうとしなかったし、あたしもたいして興味無かった。
確かにレオみたいな天真爛漫を絵に描いたような子が、複雑な家庭環境で育ってきたことは意外だったけど、そんなのよくある話だ。
部屋に入ってまず目に飛び込んできたのは、でっかい本棚だった。
とはいっても読む物は漫画くらい。
下の3段くらいを少年漫画の単行本が占領し、上の段は『スターウォーズ』のフィギュアが大切そうに飾られていた。
コウタロウの部屋で見る、小難しそうな書物が並ぶ本棚とのあまりの違いに、思わず笑いが漏れてしまう。
「さくら、何笑ってんの?」
「ん? 何でもない」
「あっそ」
そう言って、レオはごろりと小さなベッドの上に寝転がった。