電話が鳴ったのは、翌日の朝日が昇りかけた頃だった。
突然鳴り響いた着信音。あたしは不機嫌に布団を頭までかぶり、そこから腕だけをひょこっと出して携帯を探した。
部屋はまだ薄暗く、けだるさを蓄えた空気が、あたしを眠りに縛りつけていた。
「……はい」
『もしもーし。ハヤトだけど』
寝ぼけながら電話に出たあたしを、おどけたようなレオの声が覚醒に導く。
一瞬、なんでわざわざ源氏名で名乗るのかわからずに、黙りこくっていると
『昨日、俺んとこの事務所に電話したっしょ? ハヤトいますか? って』
その言葉で、ようやくあたしは、昨日の出来事を思い出した。
……そうだ。
昨日あたしはレオにチケットのお礼を言おうとして、彼の店に電話をかけた。
そして知ったんだ。
彼が一晩、女に買われたってこと。