あれから2カ月。
「すみませーん。りんごください」
東京の街はよそよそしいくらい、あたしに優しい。
「はい、りんごですね。いくつ?」
「じゃあ3つで」
誰も、あたしを責めなかった。
「お姉さん、いつもありがとうね。今日もお見舞い?」
「知り合いが入院してるもんですから」
そう……
コウタロウさえも、責めてはくれなかった。
――「さくら、コウタロウが……」
東京に戻ったあの日。
久しぶりに会ったミカが震えながら言った、その言葉。
悪い予想に、一瞬身構えて……。
「さっき目を覚ましたの」
体の力が抜けた。
仲間たちに支えられながら恐る恐る入った病室。
全身に包帯を巻いたコウタロウの目があたしを捕らえて、精一杯の生命力で、涙を流していた。
「きっとさくらが戻ってきたおかげで、コウタロウは目を覚ましたんだよ」
ミカが言った一言に、皆うなずいていた――