――もしも、果てしなく長い夢というものがあるのなら。
彼と過ごした日々は、まさにそれだったんじゃないかと思う。
あれから……東京に戻ったあたしを待っていたのは、簡単で事務的な警察の事情聴取。
「今回の事件については、ほぼ解決済みですが、現場に居合わせた人物ということで、一応ね」
そんなことを、やる気なさそうな若い刑事が言っていた。
「事件……ですか?」
無表情でそうたずねると
「事件です」
同じように、無表情で刑事が答えた。
「事件なら私も関係してるんじゃないんですか? よくわからないけど……逃亡の幇助、とか」
「幇助?」
「はい」
刑事はさらに面倒臭さをあらわにした。
「目撃者の正確な証言があるわけでもないですし。むしろ貴女は被害者側の人間でしょう?」
「……」
「何より大塚隼人本人が、貴女は無関係だと言っていますし」
そして思い出したように、刑事はこうつけ加えた。
「彼、今回の件以外にもいろいろと素行の悪さが判明しましてね。
まあ未成年なのでどんな判決が出るかはわからないですけど、この機会にしっかり更生してもらいたいもんですよ」
その声色にどこか愉快そうな響きがあったのが癪で、あたしは最後まで話を聞かずに席を立った。