……たとえば


たとえばこの世界が

見渡す限りの真っ白な世界で




道をふさぐ、行き止まりなんかなくて


大きな影を作る、ビルなんかなくて


夜を騒がしくする、ネオンなんかなくて


本当に、真っ白な世界だったなら



あたしたちは

この手を離さずにいられたのかな。







狭く閉ざされたこの部屋。


体温が混ざり合うくらい、ひたすらお互いをむさぼった。



そして、ふたり泣いた。


泣く以外、どうしようもなかった。




忘れない。


忘れないよ。


ずっと、忘れたくないから……。





……誰か。




月明かりをさえぎるあの雲を消してください。


レオの顔が、もっとよく見えるように。




激しく窓を打つ嵐の音を消してください。


レオの声が、もっと聴こえるように。




だけどそれができないのなら……




神様お願いします。



どうか、私たちを隠してください。